トランプ大統領の3つの呪文~判断軸は米株動向~

日本の十連休明けは、米中通商協議の難航を受けて、株安・円高が進行するリスクオフ相場に再び戻ってしまった。
 就任3年目のトランプ大統領が執拗に発言するジャンルは、

  1. 通商交渉
  2. FRBの金融政策
  3. 原油価格

いずれも自分に有利な状況を導き出すために、3つの呪文を唱え続けるだろう。2020年秋の大統領選挙を視野に入れ、発信のタイミングは戦略的で、重要な判断軸は米株動向であるのは明らかだ。

1つ目の呪文は通商交渉 米株高地合いで、強気な駆け引きができる

 足元は1. の呪文により、楽観的だった市場は冷や水を浴びたが、NYダウは昨年末から4000ドルも上昇の26000ドル台の高値圏にあり、交渉期限前に強気な駆け引きができる状況だった。適度な株価調整をこなすことでバブルの芽を摘めば、むしろ息の長い株高継続の環境が整えやすい。

株価の大幅下落を招くことは本意ではない

 このまま協議難航を続けて、株価の大幅下落を招くことは本意ではない。建設的な協議を続ける時間を稼ぎ、事務方では終わらず、最終的にはトップ会談による合意が必要と見込まれる。
6月28-29日開催のG20サミット(大阪)の前に、米中首脳会談が行われる可能性が高いだろう。もう暫く、トランプ劇場に根気よく付き合うしかなさそうだ。

米中の製造業マインド指数、まだ不安定な動き中国経済は戻り度合いが期待ほど強くない可能性

 年後半の世界経済回復シナリオの妥当性を確認する上で、米中の製造業マインド指数と銅価格の動きに注目している。前者は3月に持ち直した後、4月は悪化と不安定な動きでまだ回復に自信は持てない。後者では中国経済の体温を反映する銅価格の上値が重くなっている。中国経済は下げ止まりつつあるが、その戻り度合いが期待ほど強くない(レよりもL字に近い角度)可能性には、留意したい。

FRBは利上げに辛抱強くなれる、6月以降は新たな政策運営の議論へ

2つ目の呪文は、FRBへの利下げ圧力。米国は景気拡大局面(2019年7月で121ヵ月、戦後最長となる)のもと、予想外の物価上昇とならない限り、FRBは利上げに辛抱(patient)強くなれる時間帯が続こう。
 FRBは6月4-5日のシカゴ連銀でのコンファレンスを皮切りに全米各地で複数回開催、金融政策の新たな戦略、手段、情報発信などについて議論し、来年には報告書を纏める。トランプ大統領から時折、強い風当たりを受けることはあっても、来年に向けて新たな政策運営をじっくり議論できる環境は続くとみている。

6月のOPEC総会、サウジは減産合意を今年末まで延長する腹積もり

 3つ目の呪文は、原油高への牽制。米政権は「目標はイランの原油輸出をゼロにすること」と表明し、原油市場への適切な供給を確実にするため、サウジアラビアUAEとの協力を示唆した。
 しかしながら、4月30日にサウジのエネルギー相は、イラン産原油の補填を急がず、OPECと非OPECの減産合意が今年末まで延長される可能性を示唆した。
 6月25日開催のOPEC総会に向けて、まだ紆余曲折はあろうが、供給懸念がある間は、原油価格の値崩れは考え難く、高値圏での推移が続くと見込まれる。結果として、各国の物価下支えに寄与するだろう。